地域密着取材シリーズ

 

9月 残暑が続く。

我が街、大倉山に佇む一軒のお家、
御年87歳。大正時代に建てられた今では貴重な日本家屋だ。
つい先日まで一家が暮らし息づいていた。

が、ついに本日、解体された。

今回は、この街で最も古い建築物でもある
その87歳の最後を見届けようと
解体作業直前であったが、突撃取材をさせて頂いた。

長きに渡り、一家の暮らしを支えてきた。
約1週間前、一家は引っ越し、空き家になったわけだが、
その家は、人が住まなくなったとたん、一気に年老いたようだ。
まるで、人間が入院した時のように。

が、長年支えてきた貫禄と自負のようなものを感じた。

日本家屋の特徴の一つが、
夏の暑さを避ける作りに重点を置かれいることだそうだ。
ピクチャ 14

軒には長いひさしがあり、雨をさけ、日よけの役割を果たすのはもちろんのこと、
部屋は、障子やふすまで仕切られていて、
全て開けると、庭から玄関まで広範囲で風が通る作りになっている。
密室感がなく開放的で且つ、自然の涼しさを実現していた。

そして、畳、これが素晴らしい。
今でも新築マンションに畳の部屋はあるが、
昔のそれとはまるで違うようだ。

昔ながらのイ草の畳は空気を多く含む。
空気は熱を伝えにくい性質があるから、夏は涼しく、冬は温かいという
実に高性能!しかも柔らかくて心地いいという、
言う事なし!日本を代表する文化と言ってよいだろう。ピクチャ 7

しかし、マンションの1部屋にとってつけたような畳の部屋だけだと、残念ながらそんな事は感じられませんよね。 

 

 

さらに懐かしい物を見つけた。
『雨戸と戸袋』ピクチャ 4

日本家屋には庭園に面し、長い縁側があったため、6枚以上もある雨戸を次々としまう戸袋が儲けられている。その雨戸を順に奥へ収納するため、内側から手を入れて、押し込んだり、また雨戸を引き出す際に使用した作業扉であろう。

子供のころ、田舎の祖母の家へ遊びに行った時の記憶がふと蘇った。
祖母が懸命に、朝と夕、ガタガタ言わせながら、雨戸を次々に
開閉していたのを思い出す。
 当時は、夕方になれば、街中に、この雨戸を戸袋に仕舞い込む音が
響いていたという。

本当に毎日面倒だったと思うが、
この作業を家族で当番を決めて行っていたという。

一家の暮らしを守ってきたこのお家。
職人が知恵を絞り、丁寧に作られていたことが伺えた。

そして、
この家には風通しの良い
一家のコミュニケーションの場があったに違いないと感じた。