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映画『赤い靴』

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1950年に公開されたアンデルセン童話が原作のバレエ映画。
私藤川、最近は映像だけでなく、舞台芸術にも興味をもつようになり、つい先日、初めてバレエの舞台を観にいった。
とてつもなく感動し、バレエの世界観にハマりつつあるため、さてこれも観なくてはと、バレエ映画の元祖とも言える当作品をセレクト。

 

 

物語は、至ってシンプル。
世界一のバレリーナを目指すヒロイン、奇才のプロデューサーに才能を認められ、狂ったように厳しい練習にいどみ、『赤い靴』の題目でプリマの役を果たす。
その後は、スター街道をまっしぐら、順風満帆かと思われたが、私情が邪魔をする。

「バレエは単なるショーではない、信仰だ」
「このバレエ団を主宰するのは、私の使命だ」
と発するプロデューサーは、自らがスカウトした新人のヒロインで演目『赤い靴』を成功させた。これまでに無い手応えをつかみ、世界中の人々を歓喜の渦に巻き込もうと意気込んだ矢先、皮肉なまでのヒロインの恋。

ヒロインは、同時期にデビューした作曲家(こちらも天才的な作曲家で『赤い靴』の曲を見事に仕上げ大成功した)と恋に落ちる。

プロデューサーはヒロインに恋を捨てさせようと、執拗に説得する。
「私情に溺れる者は至高を目指す資格はない!」
「これは単なる嫉妬ではない!」と。

至高のプリマになって踊り続けたい、だけど恋人は捨てられない、
その狭間で苦しむヒロイン。

映画では、ヒロインの揺れ動くピュアな感情と、プロデューサーの特異な嫉妬心、バレエへの異常なまでの執着心が強烈に描かれている。

そして、映像が凄い。
長尺のバレエシーンは、踊り自体がもちろん美しく、それだけでも楽しめるが、
その踊りに映像上の装飾を加え、さらに美しく贅沢な仕上がりを見せている。
もちろん当時は、現在のようなCG技術はなかったはず、にもかかわらず、
リアルな舞台では不可能な、映像ならではの面白味のある幻想的な表現が盛り込まれていた事に驚いた。

絵画のような背景の色使いに、映える赤の靴。この赤は、刺激的でもあり、不安を誘う要素にもなっていた。

この映画の作者は、ストーリーはいい意味で適当で、バレエの芸術性や美感を最も重視して映像を制作したのであろうと納得できる。 

そして、この映画の影響でバレエダンサーを目指す人が多くいた事もうなずける。
大勢のスタッフやダンサー達との私生活も含めた仲間意識が描かれ、
世界中を巡業し、一流のオーケーストラの音楽で踊り、大衆を圧巻させる派手さ、
減量や日々の厳しい練習の中で生み出される、研ぎ澄まされたバレエ演技。
究極の何かを直感的に感じるのだろうと。

そう、自分がこの映画から感じ取ったのは、究極の覚悟で芸術表現に望む事。